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公契約条例に反対です

札幌市は、第1回定例市議会に「公契約条例」を提案しています。
今日は、この条例の問題を取り上げます。
「官製ワーキングプア」という言葉をご存知の方は多いと思います。
札幌市でも、市が発注する業務に従事する労働者の賃金が低すぎるという指摘があります。
このため、札幌市は受注業者に対して一定の賃金支給を義務付けて、随時立ち入り調査
するとともに、それに従わない場合は罰則を設けるというのが、
この「公契約条例」です。
私は、「公契約条例」には反対です。
その三つの理由を説明します。
「第1の理由」
労働者の賃金があまりに低すぎる問題を解決するのは当然です。
そのために国に厚生労働省という組織があり、札幌に北海道労働局という地方組織があって
活動しています。
賃金はマクロ経済と密接な関係があり、賃金引き上げのためにはまずは経済全体の底上げを
図ることが必要です。
無理に賃金を引き上げれば、物価に転嫁されインフレになります。
金融政策も加味したバランスが必要です。
つまり、労働政策はマクロ経済に基づく国の業務であり、一地方自治体の仕事ではありません。
「第2の理由」
近代法は「契約自由の原則」を唱えていますが、実際にはそうならない場合がしばしばあります。
たとえば、力の強いAさんと力の弱いBさんが契約する場合、対等の契約ができないおそれが
あります。
力の強いゼネコンが、下請けをいじめたりするようなケースです。
国は独占禁止法という法律を設けて、このような下請けいじめを法で禁止しています。
ところが、この札幌市の公契約条例。
札幌市が発注者という強い立場を振りかざして、受注者である弱い民間企業の経営に下請け
いじめするものと言えないでしょうか。
札幌市は幼稚園から大学、水道、空港や鉄道や病院まで経営できるほどの強大な財力と権限を
持っています。
上田市長は社会主義的に「人民」の暮らしを考えての主張も結構ですが、その前に民間企業
との力のバランスを考えてもらう必要があります。
札幌市内の民間企業は日々過当競争にさらされたうえ、過大な税負担で共倒れ寸前、という
実態を理解してほしいです。
「第3の理由」
もし公契約条例ができると、たとえば清掃会社で札幌市の仕事を担当している労働者と、それ
以外の清掃を行っている労働者の賃金が異なり、社内での賃金格差が発生します。
天下り公務員OBが札幌市だけの業務を受けている第3セクターならともかく、ふつうの業者は
民間の仕事も請け負っているので、同じ会社のなかで不公平と、社員の混乱を招く事になります。
また条例に違反すれば罰則があるうえ、札幌市への報告作業など民間企業の事務負担は
増えるばかりです。


それでは、労働者の賃金の底上げをして、みんなの生活レベルを向上させるにはどうしたら
よいでしょうか。
答えは簡単です。
最低賃金法に基づく、最低賃金を上げればよいのです。
最低賃金は最低賃金審議会で、役所の代表、労働者代表、雇用者代表の三者が公平に審議を
行い決定しています。
札幌市は公契約条例で審議会を設けて賃金を決めようとしていますが、すでに北海道には
国の最低賃金審議会があります。
もし最低賃金を守らない事業主がいれば、国が厳しい罰則を与えます。
景気がよくなれば、労働者の賃金は放っておいても増えます。
景気が悪いときは「いつまで不況が続くのか」と出口の見えないトンネルの中で嘆くものですが、
景気には必ず循環があります。
経済が上向く政策を国として実行するのが最大の解決策です。
庶民の給料を改善できるのは、通貨を発行する国家だけです。
市役所には通貨発行権はありません。
こう考えると、札幌市がいま新たに税金を投じて屋上屋を架す必要はないことがお分かりいただけ
ますでしょうか。
私にとって公契約条例とは、札幌市が自分の仕事を増やして権益を拡大したいだけ、天下り先を
増やしたいだけ、と思わざるを得ないのです。

コメント

  1. 経済の専門家ではないのでよくわかりませんが、日銀が金融緩和をしても銀行の貸出金額が増加しないと市中に円が放出されません。
    仙台市の例を見ると復興需要で高級品が売れ、夜の繁華街も賑わっています。
    そういった意味では、公共事業はデフレ対策には効果はあるのかもしれません。
    どちらにしても最低賃金法を超える賃上げは、地方自治体の仕事ではないのは同感です。

  2. おはようございます 委細了解いたしました!
    しかし、いろいろな物事を決定する過程で ○○審議会・○○シンポジュウム・○○院勧告・○○第三者委員会の××に基づいて・・・・ 
    というような 決定しようとする側の都合の良いデータばかり集めて”大儀名分”としている場合が多すぎですね
    そこまで市民は目を光らせねばなりませんね 市職員の給与の算定基準となる市内の平均給与とかも あまりにも自分達に都合の良い数字のだったりして(笑)
    何を信用してよいかわかりませんね 私は”卑怯”な人間は大嫌いなので ははははっ
    でも この板もっと盛り上がって欲しいですね 

  3. イチロー様、ケンジ様、コメントありがとうございます。
    私は「最低賃金を上げよ」という主張ではありません。
    我が国には「最低賃金制度がある」というご説明の趣旨です。
    本文中に書いたように、無理に賃金を上げれば物価に転嫁されて、
    結局、労働者の購買力は変わらないという事態もあり得ます。
    そもそも国全体の経済が縮小している中、労賃だけを上げれば
    企業そのものが破たんしてしまうのは、ご指摘の通りです。
    そして少し難しい話になりますが、国として労働者の完全雇用を
    実現するためには、中央銀行である日銀が経済成長率に対応して
    貨幣供給量の適切な調整を行えば、デフレ脱却とともに同時に
    実現できると私は考えています。
    つまり、賃上げは自治体の仕事ではなく、国の仕事なのです。
    一地方自治体である札幌市が、社会主義的発想で公契約条例で、
    組織の肥大化を図っているのは、まったくトンチンカンな発想で、
    本当に嘆かわしく、全く目も当てられません。

  4. 結論を言うと、官庁主導でやっても地方自治体の赤字が増えるだけです。
    札幌市も北海道も民需主導でやる覚悟が必要です。
    いつまで、官庁主導でやるつもりなのでしょう。
    北海道開発局を含め、不要な官庁の廃止。
    役人の給料は下がらないけど、地方自治体の赤字は増える。
    この構造改革が、必要ですね。

  5. 官庁の仕事は、ほぼ定価で落札されます。
    民間の仕事は、3割、4割引きは当たり前です。
    両方の仕事をして、やっと黒字になるのではと思うのです。
    地方自治体が最適賃金法を超える条例を作ると、
    官庁の仕事も赤字になり、入札不調になる可能性もあります。
    もしくは、官庁の仕事の落札金額が騰がり、ますます赤字が増えるでしょう。
    よってこの条例案には、反対です。

  6. おはようございます 公契約条例はけっこうもめていますが・・・・・
    私も 反対の考えが強いです 
    しかし後半の金子さんの考え(最低賃金を上げればよい)には反対です
    ①なぜ最低賃金って上げ続けるのですか(永遠に)? 生活保護との整合性?? いまはデフレ生活保護を下げるべきです
    ②経営の立場ではこれ以上のコスト増は厳しい 勝手に?毎回最低賃金を上げるが上昇分は全て雇用者の負担になる(数字が一人歩き)
    ③建設業協会等が主張しているように 入札単価(率)の改定等の方が現実的でしょうね
    まあ、その原資は『自らが身を切る改革』がまず必要でしょうね! 人事院勧告等の”隠れ蓑”を利用して保身して、市民には負担増のお土産 まさに”市中無策”