「市役所を民間企業が運営している街がアメリカにある」と聞き、5月のGW連休中に
アメリカを訪問してきました。
訪れたのはジョージア州アトランタ近郊のサンディ・スプリングス市とダン・ウディ市です。
自治体を民間に委託することを英語ではPPP(Private Public Partnership)というそうですが、
サンディスプリングス市はこのPPPの先駆けとして知られていて、実際にPPPを仕掛けた
オリバー・ポーターさんにお話を伺うことができました。
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(作家・画家のOliver W. Porterさんと私)

(上記:オリバー・ポーターさんの書いた著書は日本語訳が出版されています)
サンディスプリングス市はアトランタ中心部から地下鉄で15分ほどのところにある
人口10万人くらいの緑豊かな田園都市です。
高層ビルが立ち並び、街並みはきれいに整備されています。
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同市はかつてアトランタの郊外集落をまとめたフルトン郡の一部だったのですが、
フルトン郡役場は典型的なお役所仕事で行政サービスが信じられないほど悪く、
業を煮やしたポーターさんをはじめとした市民が立ち上がり、いまから8年前に
市として独立したそうです。
札幌でいえば、たとえば東区だけ独立して新しく市を作るようなイメージでしょうか。
オリバー・ポーターさんはかつてアメリカの大手通信会社の役員を務めていて、
「せっかく市を新しくつくるなら民間のセンスを生かした効率的な市役所を作ろう」
と、市役所の民間委託を思いついたそうです。
設立当初は市役所の職員は行政や法律のプロフェッショナルのわずか4名。
意思決定以外の市役所の業務を受託できる民間企業を公募し、一般競争入札で
落札した「CH2M Hill」という民間企業に包括で4年間の契約で市役所業務の
全面委託を決めたそうです。
日本と同じくアメリカでも公務員は終身雇用が原則で、年々肥大化する人件費や
退職金、年金債務が大きな問題となっています。
しかし、このPPPモデルでは市役所職員は民間企業なので、このような人件費の
問題が市に発生することがありません。
民間企業ですから、コスト削減は徹底していて市役所ビルは借り物です。
普通、市役所は街の中心部のもっとも地価が高いところにあるのが普通ですが、
サンディ・スプリングス市役所は街の中心部から離れた国道沿いの小さなビルに
入居していました。
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市役所は街の外れの国道沿いにあります。
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市役所はこんな小さな平屋の建物です。
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市役所の受付は無人。
電話機一つしかありません。
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市役所オフィスの中はガラス張り、整然としています。
私を案内してくれた広報担当の職員(コーファーさん)も市のバッチはしているものの
所属は民間の広報会社の職員とのこと。
札幌市でいえば、広報部の仕事をすべて電通などの広告代理店に任せているような
イメージです。
確かに広報経験がない公務員が広報を担当するより、プロに任せた方が効率的に
決まっています。
こうして徹底したコスト削減と民間の経営効率化ノウハウを活用することで、新たに
設立されたサンディ・スプリングス市の行政コストは近郊の同規模の都市と比べて
約半分になったそうです。
民間に委託している業務は、窓口対応、道路・公園などの土木、都市計画、IT、財務、
交通、地方裁判所などです。
警察・消防はさすがに市直営で運営しているものの、日本の110番に相当する911の
受付は近隣の街と共同でコールセンターを民間委託しています。
市から運営を任された民間企業も毎年業績評価があり、いかに効率化を達成したかで
報酬が変わってくるので必死です。
こうして経費削減努力で余った予算をサンディ・スプリングス市は着実に地域の道路
整備や公園整備に充てていて、この市では借金が一円もないのが自慢だといいます。
札幌のように借金漬けで無駄な公共施設を建てまくっているのとはまるで正反対です。
こうしてサンディ・スプリングス市は財務が健全なので税金も安く、街の魅力を知った
企業が全米のあちこちから続々本社を移転してきています。
ユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)やCOX、Newell Rubbermaidなど世界で
屈指の大企業がこのわずか人口10万人足らずの街に本社を移してきているのです。
税収も伸びていて人口も増え、地価も上がり、街がさらに発展するという好循環です。
全米トップ10に入る住みやすい都市として知られているそうです。
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大手システム会社COXの本社ビル
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COX本社の従業員駐車場。
車社会なので従業員駐車場も立体駐車場です。
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これはCOX本社ビルの横にある従業員の散策用の森です。
リスや小鳥がさえずっていて、考えことをするには最適な環境です。
札幌市でも補助金をぶら下げながら東京からの企業誘致を熱心に取り組んでいる
のですが、実際のところはなかなか成果はあがっていません。
「どうしてサンディ・スプリングス市という新しい街に続々企業が移転してくるのですか」
尋ねたところ、驚いたことに「特に企業誘致は行っていない」とのこと。
美しい自然環境、低い税率、整備されたインフラ、優秀な労働力などが魅力で、自然に
放っておいてもどんどん企業が集まってくるのだそうです。
うらやましいものです。
最初に市役所を委託した「CH2M Hill」の4年間の契約期限が切れた後は、さらなる
経費削減を図るため、委託内容を5つに細分化して、さらに専門とする民間企業に
一般競争入札を行い、その結果ますますコスト削減が実現できたそうです。
こちらはサンディ・スプリングス市郊外の市民憩いの場。
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サンディ・スプリングス市郊外にあるモーガン・フォールズ公園です。
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公園ではバーベキューをしながら市民が楽しんでいます。
この写真の公園は、こうしてコスト削減で生まれた貯金で整備されました。
繰り返しますが、建設に要した借金はゼロです。
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こちらは公園の地面に埋め込まれたモチーフです。
写真の真ん中にある「Honest」(誠実)「Efficency」(効率)「Responsive」(すぐやる)
の三つが街のスローガン。
官ではなく民の力を最大限に引き出すアメリカ経済の底力を見た気がします。
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この次の日に、サンディ・スプリングス市の市会議員に話を聞いたのですが、
長くなったので、また稿を改めたいと思います。