私が住んでいる札幌市東区に札幌開成中等教育学校という中高一貫校があります。
平成26年度に開校した、札幌で初めての公立の中高一貫校です。
建設されたばかりのピカピカの新校舎や全館無線LAN配備、iPadを全員に配布する斬新な教育方式、また国際バカロレア(IB)を取り入れた独自のカリキュラムなど、新しい取り組みの数々が教育関係者や保護者の大きな注目を集めました。

札幌開成中(市教委HP)

札幌開成中(市教委HPから)

独自の入学者選考

そしてもう一つの注目の的が、独自の(異例の?)入学者選考のやり方です。
それは1次試験(学力)と2次試験(面接)をクリアした合格者に最後の抽選(くじ引き)を行い、入学者を決めるという方法です。
事前の抽選で受験者を絞った上で入学試験を行うやり方は時々見られるのですが、それとは反対に、合格者を対象に最後に抽選を行うのが札幌開成の方式です。
全国でも稀なやり方で、開校当時、私の周りの保護者から違和感を訴える声が多く聞かれました。
また、市議会で他会派からも抽選方式に対する強い疑問の声がありました。
市教委にも保護者から反対の声が多数届いていました。
全員が平等にくじを引くならまだ分かりますが、学力で合格してから抽選とはあまりに滅茶苦茶です。
思春期の受験生の気持ちをまったく考えていません。
開成高校(当時)の先生からも「我々もおかしいと思っている・・・」という声が聞こえたくらいです。

謎の開成中・公式キャラクター「ちっきゅん」

しかし札幌市教委は、これら批判に耳を傾けること無く、第一回の抽選入試を強行しました。

「受験競争の過熱化を防ぐ」
「抽選は客観性、公平性に富む」
「課題探求学習のために多様性が必要だ」

などともっともな理屈で説明していました。
屁理屈だけは得意なのが札幌市役所です。
公開抽選で涙を飲む受験生の姿がテレビに映し出されると、「残酷だ」と市教委に批判が集中。
二年目も惰性で抽選を継続したところ、今度は不人気で志願者が激減してしまい(1651名→946名)、
ショックを受けた市教委は止む無く、三年目に当たる今年の入試から抽選を廃止することになったのです。

抽選廃止の理由は

抽選廃止の理由について札幌市教委は「受検生の心理的負担に配慮した」と説明しています。
また抽選入試の1期生の中で「教育に苦慮する子供が10名から20名ほどいる」ことも明らかにしています。
「このまま抽選を続ける限り、苦手としている子がいる状況が続く」から抽選を廃止するというのです。
(平成28年6月14日開催、第13回教育委員会会議録より)
驚くべき事態です。

国際バカロレア認定校はエリート校がほとんど(文科省資料)

札幌市教委が問題点に気づいて、3年目で方針を改めたのは正しい判断だと思います。
しかし、「受検生の心理的負担」など最初から分かっていた話ではないでしょうか。
日本でも初めての国際レベルのIB教育を始めようというのです。
上記の表のように国際バカロレアの認定校はインターナショナルスクールや私立の教育水準の高い学校ばかりです。
それなのに基礎学力を疎かにして抽選で合格者を決めようなどというのが初めから間違いだったのです。
こんな時に共産党や左派系議員からいつも出てくるのが「受験競争反対」「エリート教育反対」という金切り声です。

受験競争を理由に共産党は開成中設置に反対した(平成26年3月26日予算委員会議事録)

だれが抽選を決めたのか

開校時にいったい誰が抽選方式と決めたのでしょうか。
あれだけ強い批判があったにもかかわらず、反対を押し切って抽選入試を強行させた責任者は誰だったのか、その検証が必要だと思います。

それが開成中の校長ではないことは分かっていますが、果たして当時の学校教育部長なのか、教育長なのか、それとも教育委員長なのか、市長なのか?
過去の教育委員会の議事録を改めて読み返してみたのですが、他人事のような議論がなされているだけで、だれが当時の責任者だったのか、さっぱり分かりません。
まさに公教育の無責任体質を如実に表すような状況です。
当時の教育委員長も市長も退任した今となっては、誰のせいでも無いのかもしれませんが・・・。

一保護者の意見

ひとりの保護者として意見を言わせてもらえば、公立の中高一貫校はIB(国際バカロレア)などと奇をてらわず、普通に勉強して普通に大学に進学できる、当たり前の教育を施して欲しい。
IB(国際バカロレア)は確かに物珍しいですが、海外留学のサポートが公立校の役割ではないと思います。
ただでさえ教育の選択肢が少ない北海道。
高い授業料を負担して学習塾や私立の名門校に行ける家庭は良い。
しかし、親の稼ぎが少なくとも本人の頑張り次第で一流の教育が受けられる、それが公立の中高一貫校のあるべき役割だと私は思うのです。
本来は低所得者の声を代弁する共産党からこうした声が上がらないのが、不思議でなりません。