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これでも貴方は議員になりたいですか?

政治とおカネ

Googleで「渋谷区議会」と検索すると、「渋谷区議会議員 年収」と
サジェストが出てくることに気づきました。
選挙が近いためか、最近は駅頭でマイクを握っている新人候補者の方を
よく見かけます。
「議員になって渋谷を変える」と熱い訴えを聞いていると、その意気込みに感銘を覚えます。
しかし議員になってみたものの、理想と現実の壁にぶち当たることもあるかもしれません。
今日は4年前に、ふとしたきっかけで渋谷区議になってしまった男の与太話にお付き合いください。

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渋谷区議会議員の年収は

まずは気になるお給料から。
渋谷区議会議員は結構な給料をもらっています。
議員報酬の金額は区条例で決められ、すべて公開されています。
でも普通の方にはちょっと探しづらいですし、さすがに議員個人の
給与明細までは公開されません。
渋谷区議会議員を志す貴方様のために、恥ずかしながら私の給与明細を
披露させていただくことにしました。
我が家の家計レベルにあわせて丁寧に解説しますので、東京23区の
地方議員の生活はこんな感じなのかとご覧いただければ幸いです。

ある渋谷区議会議員の1月の給与明細

給与明細表を分析してみよう

渋谷区議会議員の毎月の基本給は61万1100円です。
どれだけ遅くなっても残業代はありません。
正式な会議があった日は一日あたり2000円が「費用弁償」として
追加で支給されます。
先月は正式な会議が6日あって合計12000円です。
「費用弁償」とは交通費や日当のような位置付けだと言われます。
以前はもっと高額だったそうですが、さすがに議会に出るだけで
日当はおかしいと批判を浴びてこの金額に落ち着いたそうです。。

渋谷区役所

一方で給料から引かれる控除額は所得税が42580円。
「総務委積立5千円」というのは、毎月積み立てたお金をたまに
視察に出た際の個人の昼飯代やお茶代に使っているようです。
差し引き57万5千円が毎月10日に渋谷区役所から振り込まれます。

区議の年収は係長クラス

一見すると多いのですが、ここから個人負担の住民税と健康保険、
厚生年金を私は別に納めていて月十数万円の支出。
地方議員は失業保険がないので、雇用保険料は払いません。
こうして、収入から支出を引くと手取り月給は約45万円となります。
年収では1千万円を切るくらい。
区役所では係長クラスの待遇に相当します。
係長というと早い人では30歳くらいで昇格します。
幹部級の職員からすると係長級の区議会議員は相当下に見えるみたいで、
随分ぞんざいな態度を示す職員が多いです(渋谷区だけか?)。

意外ときつい議員の家計

それでも手取り45万円と聞くと恵まれているようですが、
実はそうでもありません。
なぜかというと、渋谷は家賃がとにかく高いです。
特に家族持ちにとってはつらい。
我が家の例で説明すると、借家の家賃が月30万円。
子供の学費が二人で月10万円以上、
水道光熱費が月3万円、
携帯・ネットが月2万円、
食費が月10万円、
車の維持費が月3万円、
保険料が月3万円、
一家みんなのお小遣い○万円・・・
と引き算していくと毎月20万円以上赤字になります。
たいして贅沢もしていないのに、物価も生活費も高いのが都会です。

家計のSDGs大作戦

4年前に渋谷で議員になってから、みるみる銀行口座残高が減るのに
強い危機感を覚えました。
このままでは家計が持続できません。
固定費削減策として、まず車をBMWからマツダに変えました。

渋谷区議になってから乗り換えたマツダの中古車

コンパクトカーになって子供が悲しそうな顔をしていた割には
あまり出費が変わりませんでした。
仕方なく車はあきらめて手放しました。
次に渋谷区内で家賃が安いところに引っ越しました。
ドコモの携帯を格安スマホに切り替えました。
保険を解約しました。
積み立ても止めました。
旅行も飲み会も止めました。
政治家のパーティなどは一切出ないことにしました。
食費も削りました。
それでも貯金はできず持ち出しです。

マンションも手放した

昨年は札幌の自宅マンションを手放しました。
サラリーマン時代に買った思い出のマンションです。

札幌市中心部の景色(写真はイメージです)

いつかは戻るつもりで維持していましたが、住んでもいないのに
管理費や修繕積立金を払い続けることが厳しくなったのです。
固定資産税も年々上がっています。
いろいろ手を尽くしてもキャッシュフローがマイナスになります。
私の場合は札幌でもともと小さな会社をやっていたので、
わずかな蓄えを切り崩しながら帳尻をあわせていましたが、
専業で暮らしている議員は結構きついようです。
夏・冬にボーナスが年3ヶ月出るので、これが本当にありがたい
ですが、選挙のために軍資金として蓄えておくべきでしょう。

やりくりする方法を考えてみる

「寝言を言うな」
「税金ドロボー」
などと言われることがあります。
区役所の係長が同じくらいの給料でやっているので、その気になれば
どうにかなるのかもしれません。
家賃を削減する方法として、埼玉や千葉から通えば家賃は10万以上は
削減できる可能性があります。
でも、渋谷区議は渋谷区内に住むことが法律で義務付けられています。
区外への引っ越しはできません。
子供も区立の学校に転校させればその分節約できるかもしれません。
でも、「カネがないから学校やめろ」とは、親として言いづらい。
どうしてこんなに生活が苦しいのか、と時々思うのです。
20代の頃よりも今のほうが手取りが少ないのは何故なのだろう?

地方議員は福利厚生なし

区役所職員と違って議員には福利厚生が一切ありません。
まず、健康保険は全額自己負担です。
老後を保証する公務員年金もありません。
有給休暇も、社宅も、保養所もありません。
公務員じゃないから当然か。
区長なら4年の任期ごとに退職金がたっぷりもらえますが、
区議会議員には退職金がありません。
4年に一度の選挙で落ちれてしまえばただの人。
いや、失業保険がないので、ただの人どころか失業手当もありません。
かなり生活に困窮します。
明日は我が身だ。

落ち武者の就職先は

給料が少ないと不満を言いながら月60万円以上もらっていた
渋谷区議会議員が仮に選挙で落選したとします。

選挙の開票所。一票差で涙をのむ人も多い(写真はイメージです)

失業保険がないため、明日から収入がゼロになります。
家族を養うためには、なにか勤め先を探さなければなりません。
困った私はマイナビ転職やリクルートに登録してみました。
不動産セールスマンとかタクシー運転手のお誘いはたくさん来ます。
それでも月60万円もの給料をもらえる会社は少ないようです。
20代、30代ならともかく、50歳を超えた私の場合は再就職は厳しい。
こう考えると、同僚議員が議員の椅子にしがみつきたくなる気持ちが
分からないでもないのです。

正論の限界

私は一度選挙に落ちて浪人したことがあるので、仮に次の選挙で
落ちても、まあどうにかなるだろうと高をくくっています。
世のため、人のため、お国のためと、いくら正論を叫んでいても、
生計を維持するためにはお金という現実に直面せざるを得ません。
自民党や公明党のように政権与党にいれば役得も少なからずある
のでしょう。
しかし、零細野党や一匹狼の無所属ではそれもない。
それどころか、一匹狼では政策が実現する可能性は少ないのです。
正論が通じないなら政治家をやっている意味がないのかもしれない。
この道に迷い込んでしまうとなかなか抜けられないのが政治家稼業。
40歳の時に安定した仕事を辞めたのは間違いだったのではないかと
思うことがいまでも時々あります。

さあ、これでも貴方は議員になりたいですか?


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