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【実録】危うく、フランチャイズ詐欺に引っかかる(後編)

起業・ベンチャー

【実録】危うく、フランチャイズ詐欺に引っかかる(中編)から続きます。

札幌に戻り、「A」社から条件提示のメールが送られてきました。
(※「A」社とは私が商談中のフランチャイズ本部のことです)

FCに加盟して出店するための初期投資額は約1千万円ほど。
加盟金や保証金、店舗の什器・内装で投資額は当初思った以上の金額でした。
運転資金は向こう持ちとは言え、かなりの資金が必要です。
でも、早く決めれば条件交渉(値下げ)も可能。
札幌市内の出店予定地も仮押さえを掛けたままでした。
ですから、早急にGOサインを出す必要があります。

でも、実は私は若い頃、銀行に勤めていたことがあります。
銀行の鉄則は
「人は疑ってかかれ」
「エビデンス(裏付け)がすべて」
「向こうから訪ねて来る客は怪しいと思え」
かつて、上司からそう叩き込まれました。
自分自身も銀行から信用されていないことを常に感じていました。
私が悪いわけではなく、銀行というのは疑り深い組織なのです。
そして、いまいる不動産業界も嘘つきが多い。
不動産屋は同業者も信用しないのが互いの常識です。
これは差別でも区別でもなく、自分を守るための知恵です。
この間も、大手不動産会社が地面師にウン10億円も騙し取られたばかりですから。

不動産屋のイメージ(本文とは関係ありません)

そんな疑り深い私。
出店に必要な資金調達と合わせて、実は密かに「A」社の信用調査を依頼していました。
すると、思いがけず。
いや、案の定というべきでしょうか・・・。
芳しく無い調査結果が出てきたのです。

詳細を記すことができませんが、「A」社はここ数年、赤字が膨らんでいるようでした。
創業からしばらくの間は業績はうなぎ登りの急成長でした。
社長の経営手腕とビジネスモデルが当たったのです。
しかし数年前、余剰資金で倒産した会社「B」を買い取りました。
「B」のブランドが欲しかったのか。
それとも、「B」の社長に情が湧いたのか。
良かれと救済の手を差し伸べたのが裏目に出たのかもしれません。
このあと、「B」と道連れになって業績が悪化しています。
法務局で登記を取ると、ここ数ヶ月の間に債権者の動産譲渡登記まで掛けられています。
これは会社の資金繰りが非常に苦しいことを示唆しています。

またフランチャイズ本部「A」社は加盟店と訴訟トラブルを抱えていることも分かりました。
私は再び格安航空券で東京に向かい、関東地方近郊にある裁判所を訪問しました。
裁判所で記録を閲覧し、どんなトラブルだったか、詳しく知るためです。

成田空港に向かうカウンター、新千歳空港にて

閲覧には5百円の手数料が必要です。
裁判所の近くの郵便局で収入印紙を購入し、手数料を裁判所に納めます。
書記官が差し出したのは百科事典3冊ほどの束の膨大な裁判記録でした。

訴訟の原告はフランチャイズ加盟店のオーナー(個人)。
訴えられた被告は本部「A」社と社長。
そこには老齢のオーナーの苦悩が克明に記されていました。
両者の争いを要約すると下記の通りです。

オーナーは数年前、フランチャイズ・フェアでA社から誘われ、地元の駅ビルに出店。

しかし、初月から売り上げは目標の半分にも達しませんでした。
初月をピークにその後も売り上げは下がる一方。
FC本部から経営指導を仰ぐも、一向に成果はあがりません。
困ったオーナーはFC本部の担当者を突き上げます。
FC本部の担当者は店と上司の板挟みに苦しみ、病んで退職。
その間に店の損失は千万円単位に膨らみます。
オーナーは退店を決意し、FC本部に加盟金の返還を求める。
ところが、本部は加盟金返還を拒否。
かくして争いは訴訟にもつれ込んだ訳です。

裁判所のイメージ(本文とは関係ありません)

しかし、訴訟記録を読む限り、原告・被告の主張は平行線です。
私に言わせれば、どっちもどっち。
フランチャイズとはいえ経営は自己責任です。
売れないのはオーナーにも原因がある。
しかし、商品を供給するFC本部にも責任が皆無とは言えない。
「最初に説明では、儲かると言っていた」
「いや、言っていない」
こんな醜い争いがずっと続いていました。
オーナーが精神的に苦しんでいる状態も裁判記録から伺えました。
結局、解決金としてFC本部が100万円をオーナーに支払うとの内容で裁判は終わりました。
結局、オーナーの損失は数千万円に上ったようです。
心痛が重なり最後はオーナーは病に倒れたとも記されていました。
これから当フランチャイズに加盟しようとする自分の未来を暗示するような訴訟記録でした。
私は重い足を引きずるように札幌に戻りました。

東京から札幌に戻るバニラ・エアの機内から

その後、「A」社の勧誘員とは連絡が途絶えました。
勧誘員は辞めてしまったのか。
良い人だったのに。
いや良い人だったから良心の呵責に耐えられなかったのか。
それとも私の調査に気づいたのか。
あえて、こちらからも連絡を取りませんでした。
それから約一月が経った、10月初頭。
「A」社が破産したとのニュースがネットで飛び込んできたのです。

『東京商工リサーチ」の大型倒産速報(本文とは関係ありません)

破産の情報は官報に掲載されます。
平成30年10月2日付で裁判所の破産手続き開始が官報に掲載されていました。
おそらく9月末の資金決済に行き詰まり、破産したのでしょう。
給料が払えない、家賃が払えない、商品代金が払えない、等々。
困った人が大勢いたはずです。
一般的に倒産とは銀行取引停止処分を指します。
ところが今回、「A」社は銀行取引停止ではなく、破産でした。
これは「A」社が銀行との取引自体なかったからだと思われます。
つまり銀行借り入れすらできない、脆弱な財務体質だったことが伺えます。

ここまで書いて、お分かりでしょうか。
私はいわゆるフランチャイズ詐欺に引っかかるところだったのです。
儲かるビジネスと謳い、フランチャイズ加盟店を募集。
「A」社は出店資金として1千万円単位の金を集めることで自転車操業を続けていました。
しかし、信用調査会社によると負債総額は約13億円とのこと。
これでは、私が1千万円を納めても焼け石に水だったかもしれません。

官報 平成30年10月15日(本紙 第7367号)より引用

あらためて官報の破産公告を見ると、債務者は会社(法人)と代表者が連名になっています。
会社が破産すると社長(代表者)も道連れで破産になるのですね。
社長の個人資産は債権者に渡り、住む家すら失います。

思えば、私も自分の会社の連帯保証人になっています。
(「A」社と規模は一桁違いますが)
いつ経済環境が変わるか、分からない。
いつ災害が来て、また大停電するかもしれない。
いや日本がいつ破綻するかも分からない。

こう考えると、「A」社の破産は決して他人事とは思えません。
・ビジネスに情を持ち込んではいけない。
・QUOカードに釣られてはいけない。
平成最後の夏の、苦い思い出でした。

 

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