4月29日、アメリカ・ニューメキシコ州にあるエネルギー省サンディア研究所を

訪問しました。
今年2月にこの研究所が「臨界前核実験を行った」と北海道新聞に報道され、先日の
札幌市議会では抗議文をオバマ大統領に送っています。
(その時、68人中65人の賛成多数、私を含む3人が反対)
研究所の英文のホームページを見ると、確かにプレスリリースに四半期毎の実験報告書が
載っているのですが、割とアットホームなページで「核実験」という緊迫感は感じられません。

サンディア研究所ホームページhttp://www.sandia.gov/news/index.html


札幌市議会のオバマ大統領への抗議決議採決にあたり私は、
「臨界前核実験と核実験は全く別ではないでしょうか」
「研究所は、実験の目的は核軍縮に向けた安全技術向上と発表しています」
「憲法で戦力を保持しないわが国を、北朝鮮の核ミサイルや中国の武力による威嚇から
 守っているのは日米安保条約によるアメリカの核の傘です」
「新聞報道をうのみにして、真実を確かめないままにオバマ大統領に一方的な抗議文を

 送れば、同盟国に誤ったメッセージを送り、日米友好関係に悪影響を与えかねません」
と反対討論に立ちました。

そんないきさつもあり、この目で実験の現場を見てみたいと思い、在札幌アメリカ領事館を

通じて研究所に連絡したところ、あっさりと見学OKが出たのです。

核実験を行う研究所というと、てっきり砂漠のど真ん中にあるのかと思いきや、実は
アルバカーキ空港のすぐ隣りにありました。
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(写真提供:SandiaLabs,NNSA,U.S. Department of Energy)
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研究所の近くには、バーガーキングやコストコ、パン屋さんなどもあり、至って平和な
雰囲気です。
研究所の入口でセキュリティ・チェックを受けてから中に入ります。
写真撮影禁止だったので、雰囲気をお伝えできないのが残念なのですが、見学に
訪れる学生さんや女性職員も多くいて、明るく開放的な研究所です。

Zマシンという建物は学校の体育館の半分くらいの小さな建物で、中に入るとまるで

映画に出てくるような大きな機械が並んでいました。
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(写真提供:SandiaLabs,NNSA,U.S. Department of Energy)
 
ハリウッド映画のロケにも使われたことがあるそうです。
施設を案内してくれたのは、責任者のキース・マッツェン博士。
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この施設では何万ボルトもの高電圧を起こして、太陽と同じくらいの高い温度を
作り出して、鉄やマグネシウム、ベリリウムやウラン、プルトニウムなど、地球上に
ある様々な物質が高温でどういう状態になるのか、X線機器を使って測定している
そうです。

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(写真提供:SandiaLabs,NNSA,U.S. Department of Energy)

地球の中心にあるマントルがどうして超高温なのか、あるいは核融合で燃焼を
続ける太陽がどうして燃え続けるのか、など、まだまだ現代科学で解明されて
いないことはたくさんあり、専門チームで日夜研究しているとのこと。
「確かにプルトニウムの燃焼実験も毎日やっていますが、核兵器の開発とは
  全く関係ありません」
「研究対象はプルトニウムだけではなく、あらゆる物質です」
と博士は語ります。
私も実験施設の中心部を見せてもらったのですが、特に核マークがあるわけでなく、
立入禁止区域もなく、少なくとも核開発で人類の破滅につながるような雰囲気は
まったく感じられません。
もう20年以上前ですが、私が学生時代に東大の原子力工学科の施設で見たのと
似たような学術的な雰囲気です。
これは明らかに札幌市議会が抗議文を送るような施設ではありません。

約1時間の施設の見学を終えてから、若い研究員も交えて質疑応答をしました。
研究所では札幌市議会をはじめ、全国の地方議会がこれまで何度も送っている
抗議文は一度も見たことがないということ。
それどころか、反対している人が日本にいるとはまったく知らなかったそうです。

たぶん日本語の抗議文なので、意味不明で目的地まで届いていないのでしょう。

逆に彼らからは、
「広島や長崎なら分かるけど、どうして遠く離れた札幌が抗議するの?」
と聞かれました。
私が、
「日本では反核を訴える左翼団体があちこちにあって、誰もが賛成する「平和」を
錦の御旗として勢力拡大に使っているんですよ」
と説明すると、
「日本にはまだ共産党がいるのか?」
「冷戦が終わってから長いのに、文明国の日本がいったいどうして?!」
と驚いた様子です。
これには思わず私も苦笑せざるを得ませんでした。
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(写真提供:SandiaLabs,NNSA,U.S. Department of Energy)

今回の見学で感じたのは、「百聞は一見に如かず」ということわざがあるように、
現場に足を運んでみないと真実は分からないということです。
研究所のプレスリリースをネットで見るだけでなく、実際に研究に携わっている方に
生の声を聞かせてもらったのが大きな収穫でした。

札幌市議会の抗議文の発端となった新聞記事を書いた記者は、間違いなくこの

研究所に裏付け取材をしていません。
地方紙とはいえ、道新にはアメリカに駐在員もいるのでしょうから、ぜひ一度足を
運んで見てはいかがでしょうか。
マスコミは世論を動かす大きな影響力を持っているのですから、きちんと取材し、
真実を伝えていただきたいと思います。
また今は幸いにもインターネット社会です。
私たち市民はマスコミのフィルターを通すことなく、自宅にいながらにして真実を知る
ことができる時代になりました。
「報道をうのみにしない」「ニュースソースに直接当たる」というちょっとした努力や
好奇心が、私たち市民にも求められているのかも知れません。